「犯人隠匿罪 殺人未遂罪」【法学部】論述問題の答案の書き方を事例をもとに紹介

犯人隠避罪 殺人未遂罪


 甲は、某暴力団の組員であるが、同暴力団を脱退しようとしたAの胸を殺意をもってバタフライナイフで刺し、重傷を負わせた。
 甲は、殺人未遂罪による訴追および処罰を免れる目的で、甲のいとこであり同暴力団の組員である乙に身代わりになるように唆したところ、乙はこれを了承し、警察に出頭した。これを受けて、警察は、乙を取り調べたところ、犯人は乙ではなく甲であるとの疑いを強め、甲を本件殺人未遂事件の被疑者として逮捕・勾留した。
 そこで、甲の妹丁が、同暴力団の組員丙に、甲の身代わりとして警察に出頭するよう唆したところ、丙はこれを了承し、警察に出頭した。しかし、甲の逮捕・勾留を解くにはいたらなかった。
 甲、乙、丙および丁の罪責について論ぜよ。

論点


(1)犯人の逮捕前後における隠避
 犯人隠避罪の客体 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者
 犯人隠避罪の行為
 隠避 蔵匿以外の方法によって捜査官による発見・逮捕を免れさせる行為
 身代わり出頭 捜査官に誰が犯人であるかを動揺させる行為
 捜査官が、真犯人が甲であることの疑いを強め、甲を逮捕しようとも、
 また、捜査官が逮捕した甲を釈放するにいたらなくても、
 犯人の発見・逮捕を免れさせるおそれのある行為であるならば 隠避

(2)親族による隠避
 犯人の親族が犯人隠避をした場合
 刑法105条 親族が犯人の利益のためにした隠避(正犯))
 犯人隠避罪の構成要件に該当する違法で有責な行為であるが、
 隠避以外の適法行為を期待することが困難 その責任が減少 刑の任意的免除

(3)犯人が他人(親族)に隠避を教唆した場合
 犯人が他人に隠避を教唆した場合
 犯人が自分で隠避(逃走)しても、自己隠避であり、犯人隠避にはあたらない。
 自己隠避が不可罰なのは、防御権の行使として行われるから
 他人に隠避させた場合、その他人は犯人隠避罪の正犯にあたる。
 それを犯人が教唆した場合、防御権の濫用であり、自己隠避のように扱われない。
 犯人隠避罪の教唆が成立する。


 その他人が親族の場合は  犯人隠避罪が成立するが、責任が減少する
              刑法105条が適用 刑の任意的免除
 教唆した犯人本人は    犯人隠避罪の責任が減少する正犯を教唆した
              犯人本人の責任も減少



(4)他人(親族)が他人(非親族)に隠避を教唆した場合
 他人(非親族)が犯人を隠避 通常の犯人隠避罪
 それを親族が教唆


 親族が犯人を隠避させた場合    正犯の責任が減少し、刑が任意的に免除
 親族が他人に隠避を教唆した場合  隠避の正犯に関する刑の任意的免除の規定
                  教唆犯にも準用し、
                  犯人隠避の教唆の責任が減少し、刑が任意的に                  免除

解答例

(1)乙の行為について


1乙の行為は犯人隠避罪にあたるか
2犯人隠避罪とは
3乙は甲の代わりに出頭した。しかし、捜査官は殺人未遂の犯人は乙ではなく、甲であることの疑いを強め、甲を逮捕した。
4乙の身代わり出頭
 捜査官が、真犯人が甲であることの疑いを強め、甲を逮捕しようとも、
 犯人の発見・逮捕を免れさせるおそれのある行為であった
 隠避に該当
 ただし、乙は甲の親族
 親族による犯人隠避 隠避以外の適法行為の期待可能性が減少 その責任が減少
 刑法105条の適用 刑の任意的免除
5犯人隠避罪が成立する。ただし、その刑が任意的に免除される。

(2)丙の行為について

1丙の行為は犯人隠避罪にあたるか
犯人隠避罪とは
3丙は甲が逮捕された後に身代わりで出頭した
4丙の身代わり出頭
 捜査官が逮捕した甲を釈放するにいたらなくても、
 犯人の発見・逮捕を免れさせるおそれのある行為であった
 隠避に該当
5犯人隠避罪が成立する。

(3)甲の行為について


1甲の行為は殺人未遂罪にあたる。乙をその身代わりに出頭させた行為は、犯人隠避罪の教唆にあたるか。
2犯人隠避罪とは
 教唆とは
3甲は殺人未遂を行い、いとこの乙に身代わりに警察に出頭するよう求めた。
4犯人隠避罪
 罰金以上の刑にあたる罪を犯した他人を隠避する行為
 罪を犯した自分が隠避しても、犯人隠避にはあたらない。
 それは防御権の行使であり、それ以外の適法行為を期待できないから。
 しかし、他人に身代わりに出頭させて、自己を隠避させるのは、
 防御権の濫用であり、適法行為の期待可能性がないといえない
 ただし、その他人が親族の場合、正犯の親族は規程可能性が減少する
 その教唆犯も、親族に身代わりを教唆する限りにおいて、期待可能性が減少する
5犯人隠避罪が成立するが、刑法105条を準用して、その刑が任意的に免除される。

(4)丁の行為について


1丁の行為には犯人隠避罪の教唆が成立するか。
2犯人隠避罪とは
 教唆とは
3丁は丙に甲の身代わりに警察に出頭させた。しかし、甲は釈放されなかった。
4丙の身代わり出頭
 捜査官が逮捕した甲を釈放するにいたらなくても、
 犯人の発見・逮捕を免れさせるおそれのある行為であった
 隠避に該当
 丁 丙に犯人隠避を教唆
 丁は甲の親族
 親族による犯人隠避の正犯 適法行為の期待可能性の減少 責任の減少
 105条 刑の任意的免除
 その規定を共犯(教唆犯)に準用
 丁の犯人隠避の幇助 期待可能性の減少 責任減少
5犯人隠避の教唆が成立し、刑法105条の準用 刑の任意的免除

結論


 乙 犯人隠避罪が成立する。ただし、親族であったことから105条が適用される。
 丙 犯人隠避罪が成立する。
 甲 殺人未遂罪が成立する。
   乙に対する犯人隠避罪の教唆が成立する。
   ただし、親族に対する教唆であったので、105条が準用される。
 丁 丙に対する犯人隠避の教唆が成立する。
   ただし、丁は甲の親族であったので、刑法105条の準用される。

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