「公務執行妨害罪 偽計業務妨害罪」刑法論述問題の答案の書き方

公務執行妨害罪 偽計業務妨害罪

 甲は、A町の町長選挙における立候補届出受付順位を決定するくじ引きの際、自己を含む10名の立候補予定者の届出に必要な書類を封入した封筒に加工し、あたかも汚物が在中するかのごとく装い、同書類の確認作業を困難にするなど、届け出受理事務を著しく遅延させた。
 A町の町長選挙においては、これまでにも立候補届出受理事務が妨害されるという事件が数件起きていたことから、当日は警察官BおよびCが警備にあたっており、甲と、甲のすぐそばに立ち、挙動不審であった乙を現行犯逮捕しようとした。これに対し、本件とは無関係の乙は、逮捕されるいわれはないと考え、両名に対し殴りかかるなどして激しく抵抗した。 

 甲および乙の罪責を論ぜよ。

論点

(1)甲が封筒に加工に、汚物が在中するかのようにし、立候補の届出受理事務を遅延させた。

  封筒に加工した行為は偽計にあたるか。

(2)乙は無関係であり、が逮捕されるいわれはないと、警察官B・Cをなぐった。

  この逮捕は違法なのか。それとも適法なのか。

 公務執行妨害罪における職務は構成要件要素であり、適法な職務でなければならないが、その適法性とは、客観的・事実的な構成要件要素ではなく、暴行が行われた行為時に立って、一般人の認識(素人的意味の認識)をもとに判断される規範的な構成要件要素である。

 解答例

(1)甲の行為について

1甲の行為は公務執行妨害罪にあたるか

2公務執行妨害罪とは

3甲は、封筒を加功して、立候補の届出受理事務を遅延させた

4封筒の遅延は偽計

 立候補の届け出受理事務は公務員の職務。しかし、公務執行妨害罪は、職務を執行する公務員を暴行・脅迫から保護する規定であり、偽計から保護するものではない。

 ただし、公務員の職務にも強制力の行使を伴う権力的公務とそれを伴わない非権力的公務がある。立候補の届出受理事務は強制力の行使を伴わない非権力的公務とがある。これは業務妨害罪で保護される。

 偽計を用いて立候補届出受理事務を妨害したのは偽計業務妨害罪

5従って、甲には偽計業務妨害罪が成立する。

(2)乙の行為について

1乙の行為は公務執行妨害罪にあたるか

2公務執行妨害罪とは

3乙は、偽計業務妨害罪を行った甲とは無関係であるにもかかわらず、現行犯逮捕されそうになったので、それに抵抗するために暴行を加えた

4公務執行妨害罪における職務は適法なものでなければならない。

  警察官は、甲の偽計業務妨害罪とは無関係な乙をその現行犯として逮捕した。これは誤認逮捕であった。では、その逮捕は違法か。

 公務執行妨害罪における職務の適法性は、事後的に認定される事実的な概念・要素ではなく、 行為の時点における一般人の認識を基準に判断される規範的な概念・要素である。

  乙は、偽計業務妨害罪を行った甲の傍らに立ち、挙動不審な動きを見せており、警察官がその乙を甲の関係者であると思い、逮捕したのは、行為時における一般人の認識を基準に判断するならば、適法といえる。乙はそのような適法な現行犯逮捕に抵抗するために暴行を加えた。

  乙の行為は公務執行妨害罪の構成要件に該当する違法な行為である。では、乙にはその故意は認められるか。

  乙は甲とは無関係であるので、逮捕されるゆわれはないと認識していた。しかし、警察官による逮捕であること、一般人の認識に基づけば適法な逮捕であること、これらの認識(素人的意味の認識)はあったといえる。

 従って、公務執行妨害罪の故意を認めることができる。

5以上から、乙には公務執行妨害罪が成立する。

(3)結論

 甲には偽計業務妨害罪が成立する。

 乙には公務執行妨害罪が成立する。

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