法学部生必見 刑法の答案の書き方「窃盗 事後強盗 強盗致傷」

窃盗の既遂時期、事後強盗罪、強盗致傷罪

 Aは万引き目的で甲スーパーへ買い物客を装い立ち入った。そして、同スーパー内で買い物かごに商品数点をいれ、レジを通ることなくレジの外側に持ち出し、カウンター上に置いて、同店備え付けのビニール袋に商品を移そうとしたところ、同店の店員乙に取り押さえられそうになったので、逮捕を免れる目的で、Aは乙の手を振りほどき、商品をその場に置いたまま逃走した。乙はその拍子に転倒して加療1週間の傷害を負った。後から追いかけてきた店員丙が更にAを追跡し、約30分後、同スーパーから約1キロメートル離れた路上で取り押さえようとしたところ、Aは逮捕を免れるために、手拳で丙の顔面等を数回殴打し、負傷させ たうえ、逃走した。
 Aの罪責を論ぜよ。

 論点

(1)万引き目的に基づくスーパーへの立ち入りと建造物侵入罪

(2)スーパーでの万引き=窃盗の既遂時期

(3)万引き後に逮捕を免れるために店員乙の手を振りほどき、転倒させ、加療1週間の生涯を負わせた

(4)万引きから30分経過し、スーパーから1キロメートル離れた場所で店員丙に暴行を加えた

 答案構成

(1)Aが万引き目的からスーパーに立ち入った行為

1Aが万引き目的からスーパーに立ち入った行為は建造物侵入罪にあたるか。

2建造物侵入罪とは、人の看守する建造物に、建物の管理責任者の意思に反して立ち入る行為である。

3Aは万引き目的からスーパーに立ち入った。

4スーパーには、客対応や営業の円滑化のために店長や従業員がいるので、人の看守する建造物にあたる。Aは万引き目的に基づいてスーパーに立ち入っている。それは管理権者の意思に反するか。

 一般にスーパーの管理権者は、そこへに立ち入る行為に対して一般的・包括的に許可している。確かに万引き目的の立ち入りには問題があるが、管理権者が貼り紙などをしてそのような立ち入りを明示的に拒否してはいない。そうすると、Aの立ち入りは侵入にはあたらないようにも思われる。

 しかし、万引き目的での立ち入る行為にまで管理権者が同意しているとはいえない。管理権者がそのような立ち入りを拒否することは合理的に推測できるので、Aの立ち入りは侵入にあたるといえる。

5従って、Aには建造物侵入罪(刑法130条)が成立する。

(2)Aが万引きした商品をレジの外に持ち出した行為

1Aが万引きした商品をレジの外に持ち出した行為は、窃盗の既遂にあたるか。

2窃盗罪とは、他人の財物を窃取する行為である。それは財物に対する他人の占有を侵害し、それを自己または第三者の支配領域に移転することをいう。

3Aは万引きした商品をレジの外に持ち出し、カウンターに置いたまま逃走している。

4窃盗罪の既遂時期は、財物の形状、大小、軽重に応じて個別に判断しなければならないが、Aが万引きしたのはスーパーの商品であり、買物かごに入る程度の小さなものである。このような小さな財物であるが、その占有の移転時期は、商品を手にしたり、買物かごに入れた時点ではなく、レジで代金を払わずに、カウンターに移動した時点であると考えられる。客が商品を持って、カウンターにいる場合、それはすでに代金を支払い終えていると理解される。そこにAがいる場合、Aは万引きして商品を手にしているのではなくか、代金を支払って購入したとしかうかがえない。従って、本件の事案での窃盗の既遂時期は、Aがレジを通過せずに、その外に出た時点であると思われる。

 そうすると、Aがレジを通過せずに外に出た時点で商品の占有は移転し、窃盗罪は既遂に達している。

5従って、Aには窃盗既遂罪(刑法235条)が成立する。

(3)Aが店員乙の手を振りほどいて、加療1週間の傷害を負わせた行為

1Aが窃盗既遂後に店員乙の手を振りほどいて、加療1週間の傷害を負わせた。事後強盗罪が成立するか。

2事後強盗罪とは、窃盗が、財物を得てこれを取り返されるのを防ぎ、逮捕を免れ、または罪跡を隠滅するために、暴行または脅迫を加える行為であり、それによってすでに成立している窃盗既遂罪は強盗罪として扱われることになる。この暴行・脅迫は、強盗罪(刑法236条)の手段行為と同様に被害者の反抗を抑圧する程度のものであることを要する。

3Aは窃盗既遂後に店員乙による逮捕を免れるために、その手を振りほどき、加療1週間の傷害を負わせた。

4Aは乙の逮捕を免れる目的があったので、刑法238条所定の目的にあたる。では、乙の手を振りほどく行為は、被害者の反抗を抑圧する程度であったといえるか。

 Aには逮捕を免れる目的があったが、手を振りほどくという行為は乙の反抗を抑圧するほどのものではなかったので、それは事後強盗罪の「暴行」にはあたらない。とはいえ、加療1週間の傷害を負わせているので、傷害罪(刑法204条)が成立する。

 Aには逮捕を免れる目的があり、手を振りほどいて、加療1週間の傷害を負わせている。手を振りほどく行為それ自体に強度はなくても、他の要因と相まって加療1週間の傷害を負わせたことから、事後強盗罪の暴行にあたり、そこから傷害が発生している。

5従って、傷害罪(刑法204条)が成立し、すでに成立している窃盗罪は強盗罪として扱われ、そこから傷害が発生しているので、強盗致傷罪(刑法240条前段)が成立する。

(4)Aが万引きから30分後、スーパーから1キロメートル離れた場所で店員丙に暴行を加えた行為

1Aが丙の顔面を手拳で殴打し、負傷させた行為は、事後強盗罪にあたるか。

2事後強盗罪とは、上記(2)2で説明した行為である。

3Aは窃盗後、逮捕を免れるため、店員丙の顔面を殴打し負傷させているので、(事後)強盗致傷罪にあたると思われるが、Aはその行為を万引きから30分後に、スーパーから1キロ離れた場所で行っている。

4事後強盗罪の暴行は、窃盗が逮捕を免れる目的から窃盗の被害者に対して行う行為であるが、それが強盗罪として扱われるためには、窃盗の機会継続中に行われていなければならない。それは窃盗と暴行の時間的・場所的近接性を踏まえて判断される。Aは万引きから30分後にスーパーから1キロメートル離れた場所で暴行を行っているので、窃盗の機会継続性は認めがたいようにも思われるが、店員丙が窃盗犯Aを追跡していたので、依然としてAの窃盗は終息しておらず、その機会継続中であるといえる。そして、その暴行から傷害が発生している。

5従って、Aには強盗致傷罪が成立する

結論  

Aには乙への傷害罪(刑204)と丙への強盗致傷罪(刑240)が成立する。両罪は併合罪になる(刑45)。乙への強盗致傷罪、丙への強盗致傷罪が成立する。二つの強盗致傷罪は包括一罪である。

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