法学部生必見 刑法の答案の書き方「窃盗罪 占有離脱物横領罪 親族相盗例」

占有している状態?窃盗罪が成立するには

 Xは、Mデパートの6階エスカレーターわき付近において、貴金属の入った小さな紙袋を発見した。その紙袋は、Aがその場所から同店地下1階の食料品売場にエスカレーターで移動した際に同所のベンチに置き忘れたものであった。Xは、これを自分のものにするつもりで持ち去った。なお、付近には手荷物らしき物もなく、当該紙袋だけがベンチに放置された状態にあったが、Aは当該紙袋を置き忘れた場所を明確に記憶しており、約10分後には置き忘れた場所に戻って来た。また、ベンチの近くに居合わせたBが当該紙袋の存在に気づいており、持ち主が取りに来るのを予期してこれを注視していた。その後、Xが当該貴金属を自宅に持ち帰り保管していたところ、Xの息子Yがこれを発見し、Xの物だと思って、これを無断で持ち出した。

 XおよびYの罪責を論じなさい。

論点

(1)Xが貴金属の入った紙袋を持ち去った行為

(2)Yが貴金属を無断で持ち出した行為

答案構成

(1)Xが貴金属の入った紙袋を持ち去った行為

1問題提起(〇〇は××罪にあたるか、それとも△△罪にあたるか)

 Xの行為は窃盗罪にあたるか、それとも占有離脱物にあたるか。

2概念・要件の説明(〇〇罪とは、△△罪とは、どのような犯罪か)

 窃盗罪とは、財物に対する他人の占有をその意思に反して侵害し、その財物を自己・第三者に移転する行為をいう。占有離脱物横領罪とは、他人の占有を離れた財物を領得する行為をいう。。

 財物の占有とは、財物に対する事実上の支配であり、その支配の有無は、財物の形状、大小、軽によってここに判断することが必要である。財物が財物が他人の占有下にあれば窃盗罪が、それがなければ占有離脱物横領罪が成立する。財物の占有の有無が両罪を区別する基準となる。

3事実の認定(被告人Xはいかなる行為を行ったか)

 XはMデパートの6階エスカレーターわき付近において、ベンチの上に置かれた貴金属の入った小さな紙袋を発見し、それを持ち去った。

4概念・要件の事実への当てはめ(被告人Xの行為の評価と法的意味の判断)

 Aが置き忘れた紙袋はデパート6回のエスカレーター脇のベンチの上にあり、そこには持ち主らしき人物はいなかった。それゆえ、その紙袋は誰かによって支配されているには見えない。従って、その紙袋は持ち主の占有から離れた物、占有離脱物であるといえそうである。

 しか、持ち主のAは、エスカレーターで地下1階の食料品売り場に移動した後、紙袋を置き忘れたことを思い出し、10分後には戻ってきた。また、その間、置き忘れた場所を正確に記憶していた。さらに、ベンチの近くにいたBは持ち主が戻って来ることを予期しながら、注視していた。

 このように、紙袋がベンチの上に置かれていたこと、Aが置き忘れた場所を覚えており、10分後に戻ってきたこと、Bがそれを注視していたことなどの事実関係を踏まえると、Aは紙袋をベンチの上に置き忘れ、そこから離れたとはいえ、それに対する事実上の支配は継続していたと評価することができる。従って、それを持ち去ったXの行為は、紙袋に対するAの占有を侵害し、それを自己の支配領域に移転させた行為であるといえる。

5結論

 従って、Xには窃盗罪(刑235条)が成立する。

 *なお、論文問題集の解答例では、貴金属の入った紙袋に対するAの占有は否定されているため、窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪の成立が肯定されている。

Yが貴金属を無断で持ち出した行為

1問題提起

 Yの行為は窃盗罪にあたるが、親族相盗例が適用し、その刑を免除できるか。

2概念・要件の説明

 親族相盗例(刑法244条)とは、親族間の窃盗罪などについては、「法は家庭に入らず」の考えをもとに、行為者の親族であるという一身的特性を理由に刑事政策的に刑罰を科すのを控える制度である。親族関係は、行為者者と財物の占有者だけでなく、その所有者の間にあることが必要である。

3事実の認定

 YはXが保管していた紙袋の貴金属を持ち出した。これはYの貴金属に対する占有を侵害し、それを自己の支配領域に移転しているので、窃盗罪にあたる。

4概念・要件の事実への当てはめ

 XはYの父であり、窃盗の行為者Yと貴金属の占有者Xとの間に親族関係が認められるが、親族相盗例を適用するためには、その所有者Aとの間にも親族関係があることが必要である。YとAの間にそのような関係はないので、親族相盗例を適用することはできない。

 また、Yは貴金属が「Xの物だ」、つまりXが占有する貴金属がXの所有物であると錯誤していたが、たとえそのような錯誤があっても、Yは「Xの物」、つまり他人の財物であることを認識していたので、この錯誤は窃盗罪の故意の成否に影響を及ぼさない。

5結論

 従って、Yには窃盗罪(刑法235条)が成立する。

結論

 Xには窃盗罪(刑法235条)が成立する。Yには窃盗罪は成立する(刑法235条)。

タイトルとURLをコピーしました