法学部生必見 刑法の答案の書き方「強盗殺人罪②」

強盗殺人罪②

 Xは甲の留守宅に侵入し、金庫の中にある現金1000万円を、持参したボストンバッグの中に詰め込んだ。Xは目的を達し、甲宅をあとにしようとしたところ、突然甲が帰宅し、玄関で鉢合わせになった。Xはとっさに甲の財布も奪おうと思いつき、上着の内ポケットに隠し持っていた小刀を甲に突きつけて「けがをしたくなければ、おとなしく財布を出せ。」と甲に迫った。甲は武道の心得もあり、剛胆な性格であったことから、恐怖を感じることはなかったが、「相手は小刀を持っているので、もみ合いになればけがをするかもしれない。ここは素直に財布を渡して、機を見て取り返そう。」と考え、財布をXに渡した。Xは財布とボストンバッグを持って玄関から逃げ出した。甲もすぐに玄関を飛び出し、Xを追いかけ、「強盗だ、だれかそいつを捕まえてくれ。」と叫んだ。たまたま付近を通りかかった乙がそれを聞いてXを追い掛けた。Xはこのままでは乙に追いつかれてしまうと考え、所持していたけん銃を懐から取り出し、死亡することになってもやむをえないとの意思で乙に発砲し、死亡させた。Xの罪責を論ぜよ(特別法違反の点は除く。)。

論点

(1)Xが甲の留守宅に立ち入った行為。

(2)Xが現金1000万円をボストンバッグに入れた行為。

(3)Xが帰宅した甲と鉢合わせになり、その財布を奪うために小刀で脅迫し、財布を奪奪った行為。

(4)Xが逃走中に甲の呼びかけを聞いた乙に追い掛けられ、殺意を発砲し死亡させた行為。

(1)甲の留守宅に立ち入った行為

1Xの行為は住居侵入罪にあたるか。

2住居侵入罪は、正当な理由がなく他人の住居に立ち入る行為である。

3Xは留守宅の甲の住居に入った。

4Xが甲の住居に入る際に、甲は留守であり、居住者の許可を得てない。また、入って現金1000万円を盗っているので、その目的は窃盗などの目的によるものであった。

5従って、Xの行為には住居侵入罪が成立する(刑法130条前段)。

(2)Xが1000万円をボストンバッグに入れた行為

1Xの行為は窃盗罪にあたるか。

2窃盗罪とは、財物を占有する他人の意思に反して、その占有を侵害し、当該財物を自己または第三者の事実上の支配領域内に移転する行為である。

3Xは甲の留守宅にあった1000万円の現金をボストンバッグに詰め込んだ。

41000万円は甲が占有する現金であり、Xがその占有を自己に移転することを、甲の意思に反していることは明らかである。さらに、Xがボストンバッグに現金を入れたことで、それが甲の現金ではなく、Xの現金のような外観を呈するに至ったので、現金の占有はXに移転したと認定することができる。

5従って、Xの行為は窃盗既遂罪(刑法235条)にあたる。

(3)Xが小刀を用いて、甲の財布を奪った行為

1Xは窃盗後、玄関から逃走する際に帰宅した甲と鉢合わせになり、その財布を奪う意思を生じて、携帯していた小刀を用いて、財布を奪った。この行為について強盗罪が成立するか。

2強盗罪とは、暴行・脅迫を用いて人の占有する財物を強取行為である。暴行・脅迫は、一般に被害者の反抗を抑圧する程度のものでなければならない。人の財物の強取については、窃盗罪と同じ要件である。

3Xは甲に小刀を突き付けたが、武道の心得のある甲はそれに恐怖を感じることなく、「ここは素直に財布を渡して、機を見て取り返そう」と判断して、財布を渡した。

4Xが小刀を用いているが、Xの行為が強盗罪の手段行為である暴行または脅迫にあたるかが問題になる。甲はXに小刀を突き付けられても、恐怖を感じなかったので、甲による反抗は抑圧されたとはいえない。しかし、強盗罪の手段行為である暴行・脅迫の程度は、一般人を基準に判断されるので、現に被害者の犯行が抑圧されることは必要ではない。小刀を突き付けられれば、一般には反抗し難くなるといえるので、Xは一般に被害者の反抗を抑圧する程度の暴行または脅迫を用いて、甲から財布を奪ったといえる

5従ってXの行為は強盗罪(刑法236条1項)にあたる。

(4)Xが逃走中に甲の呼びかけを聞いた乙に追い掛けられ、殺意を発砲し死亡させた行為

1Xが乙に発砲し死亡させた行為は強盗殺人罪にあたるか。

2強盗殺人罪とは、強盗が故意に人を殺害する行為である。強盗の手段行為である暴行を行う時点で殺意があり、現に被害者を殺害した場合だけでなく、強盗の終了後であっても、その機会継続中に殺人罪が行われた場合でも強盗殺人罪が成立する。また、殺人は、強取した財物の確保や逮捕を免れるために行われるような場合、その客体は強盗罪の被害者本人だけでなく、財物奪還や現行犯逮捕しようとする第三者も含まれる。

3Xは甲から財布を強取した後、甲の呼び声を聞いた乙に追い掛けられ、捕まえられるのを防ぐために、殺意に基づいてけん銃を発砲し、殺害した。

4Xが乙を殺害したのは、甲に対して強盗を行った直後で、乙に捕まえられそうになった時点であり、それは時間的・場所的に見て近接性があった。従って、強盗の機会継続中であったといえる。また、乙は強盗の直接の被害者ではないが、甲から被害を聞き、Xを捕まえようとしたのであるから、乙を殺害することは逮捕を免れることにほかならず、強盗の機会継続中の殺人といえる。

5以上から、Xの行為は乙に対する強盗殺人罪(刑法240条)にあたる。刑法240条は、致死傷の結果につき故意のない結果的加重犯と解することもできるが、致死傷の結果につき故意のあるの処断刑の不均衡を回避するために、その故意のある場合も含むと解すべきである。

結論

 Xには甲に対する住居侵入罪、窃盗罪および強盗罪、そして乙に対する強盗殺人罪が成立する。住居侵入罪と窃盗罪は牽連犯(刑法54条後段)である。窃盗罪と強盗罪は、同一の被害者・甲に対する行為であり包括一罪として強盗罪として処理される。甲に対する強盗罪と乙に対する強盗殺人罪は併合罪の関係に立つ。

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