法学部生必見 刑法の答案の書き方「名誉毀損罪 業務妨害罪」

名誉毀損罪

 雑誌記者Xは、Y女が高名な宗教家であるAと長期不倫関係にあるとのうわさを聞き、真実であるか否かを確かめようとしてYをホテルの一室に呼び出して、事実関係を問いただした。YはAと何の関係もなかったが、今後予定されているAの講演会の開催を妨害して、Aを懲らしめてやろうと考え、「Aは私と不倫している。」と発言した。XはYの発言のみでこれを真実であると軽信して、その事実を雑誌に掲載した。その後、AとYとには何の関係もないことが判明したが、Aの講演会活動にはまったく影響がなかった。

 XおよびYの罪責を論じなさい。

論点

(1)XがAとY女の不倫関係の事実を雑誌に掲載した行為

(2)Y女がXに虚偽の不倫関係の事実を伝え、Xがそれを雑誌に掲載する決意を生じさせた行為

(3)Y女がXに虚偽内容の記事を雑誌に掲載させて、Aの後援会活動を妨害しようとした行為

(1)XがAとY女の不倫関係の事実を雑誌に掲載した行為

1問題提起

 XがAとY女の不倫関係の事実を雑誌に掲載した行為は名誉毀損罪にあたるか。

2概念・要件の説明

 名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損する行為である。ただし、摘示された事実が公共の利害に関する事実であり、摘示した目的が専ら公益を図ることにあり、かつその事実が真実であることが証明された場合には、処罰されない。不処罰の理由は、その行為が名誉毀損罪の構成要件に該当しても、違法性が阻却されるからである。

3事実の認定

 XはAとY女の不倫関係を雑誌に掲載した。AがY女と長期間不倫関係にあるという事実はAの私生活上の事柄であり、その宗教家としての社会的評価を引き下げ得る行為であり、「事実の摘示」にあたる。不特定または多数の人が読むことのできる雑誌にその事実を掲載したので、「公然性」も認められる。ゆえにXの行為は名誉毀損罪にあたるといえそうである。しかし、Aの不倫関係はAの私生活上の事柄であって、公的な関心事ではないが、それは宗教家としての活動・実績を評価するうえで重要な事実であり、「公共の利害に関する事実」にあたると。また、Xは宗教家Aを批判し告発するために記事を掲載したといえるので「公益を図る目的」があったといえる。ただし、真実であることが証明されなかったので、名誉毀損罪の違法性は阻却されない。

4事実への要件のあてはめ

 しかし、このように事実の真実性を誤信した場合でも、誤信したことに相当の理由があった場合には、違法性を基礎づける事実の認識がなかったとして故意を阻却することができる。XはY女から不倫関係の事実があることを伝えられたが、それだけでその事実を真実と誤信し、それ以上に取材や情報収集などしなかった。不倫関係の事実を真実であると誤信したのは軽率であり、相当の理由があったとはいえない。ゆえに、名誉毀損罪の故意を阻却することはできない。

5結論

従って、Xには名誉毀損罪(刑法230条)が成立する。

Y女がXに虚偽の不倫関係の事実を伝え、Xがそれを雑誌に掲載する決意を生じさせた行為

1問題提起

 Y女の行為は、Xの名誉毀損罪の教唆にあたるか。

2概念・要件の説明

 教唆とは、人を唆して犯罪を決意させて、実行させることである(刑法61条)。

3事実の認定

 Y女は、Aと不倫関係の事実があることをXに伝え、その事実が虚偽であるにもかかわらず、Xに真実であると誤信させて、雑誌に掲載させることを決意させ、実行させている。

4事実への要件の当てはめ

 Y女は、Aとの虚偽の不倫関係の事実をXに伝え、Xにその事実を雑誌に掲載する意思を決意させ、それを実行させたので、Xによる名誉毀損罪を教唆したといえる。

5結論

 従って、Y女には名誉毀損罪の教唆(刑法61条、230条)が成立する。

Y女がXに虚偽内容の記事を雑誌に掲載させて、Aの講演会活動を妨害しようとした行為

1問題提起

 Y女がXにAとの虚偽の不倫の事実を伝え、それを雑誌に掲載させ、Aの講演会活動を妨害しようとした行為は、虚偽の風説の流布による業務妨害罪にあたるか。

2概念・要件の説明

 虚偽の風説の流布とは、虚偽の事実を真実であるかのように不特定または多数の人に伝えることである。業務の妨害とは、人の営利・非営利活動を妨害することである。風説の風説の流布によって、人の業務が直接的に妨害される場合だけでなく、その風説が人を介して、第三者に伝播して間接的に業務が妨害される場合も含まれる。また、業務の妨害とは、実際に業務の遂行が阻まれるという結果が発生した場合だけでなく、そのおそれがあった場合も含まれると解される。

3事実の認定

 Y女は、Xに対して、自己とAとの間に不倫関係があるという虚偽の事実を伝え、それを雑誌に掲載させて、不特定または多数の人に流布した。Xの行為は虚偽の風説の流布にあたる。

4事実への要件の当てはめ

 ただし、その行為はAの講演会活動にはまったく影響しなかったので、業務妨害は未遂であり、未遂処罰規定が設けられていないので、処罰されないと解することもできる。しかし、本罪は業務が妨害されたという結果が発生した場合だけでなく、その危険があった場合にも成立しうると解される。また、Aには講演会活動を妨害する意思があったので、その故意も認められる。

5結論 

 従って、Y女には虚偽の風説を流布した業務妨害罪(刑法233条)が成立する。

結論

 以上から、Xには名誉毀損罪(刑法230条)が成立する。

 Y女には名誉毀損罪の教唆(刑法61条、230条)と虚偽の風説の流布による業務妨害罪(刑法233条)が成立する。Y女に成立する2罪は観念的競合(刑法54条前段)の関係に立つ。

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