法学部生必見 刑法の答案の書き方「事後強盗罪 盗品等有償処分のあっせん罪 横領罪」

事後強盗罪

 甲は、窃盗の目的でA方に侵入し、金品を物色していた際、Aの妻であるBに発見され、叫ばれたので、手元にあった仏像を盗んで、逃げ出した。しかし、帰宅してきた夫のAが、Bの「どろぼう。」との叫び声に気づいて、逃走する甲を発見・追跡してきた。そこで、甲はすぐさま物陰に隠れてAをやり過ごし、携帯電話で友人乙に事情を話して応援を求めた。10分後、乙がやってきて甲にナイフを手渡した直後、甲はAに発見された。そのため、甲はナイフで、追跡してきたAの足を刺し、乙とともに逃げ去った。その結果、Aは重傷を負った。その後、乙は、甲に仏像の換金を依頼されたので、盗んだ仏像を質屋に持っていき、自分の物だと言って、金を借り、そのうちの半分だけを甲に渡し、半分を着服した。甲・乙の罪責を論ぜよ。

論点

(1)甲がA宅に窃盗目的で侵入し、仏像を窃取した行為。

(2)仏像の窃取後、甲が友人乙に事情を話し、やって来た乙からナイフを受け、そのナイフでAの足を刺し、重傷を負わせた。

(3)甲から事情を説明された乙が、甲にナイフを渡して、Aへの刺突行為を援助した。

(4)甲は乙に仏像の換金を依頼し、それを引き受けた乙がそれを質屋に持ち込み、自分のものだと欺いて金を借りた。

(5)乙が借りた金の半分を着服した。

(1)Aの住居に侵入後、仏像を盗んだ。

1住居侵入罪と窃盗罪が成立するか。

2住居侵入罪とは、窃盗罪とは。(省略。過去の記事を参照)

3甲は、A宅に入り、仏像を盗って、逃げた。

4住居への侵入と財物の窃取の要件を満たす。

5住居侵入罪(刑130条)と窃盗罪(刑235条)が成立する。

(2)甲がAの足にナイフで刺突し、重傷を負わせた。

1甲がAの足にナイフを刺して逃げた行為は、事後強盗傷害罪か。

2事後強盗罪とは。暴行が窃盗の機会継続中に行われていることが必要。また、相手に傷害を負わせる故意がある場合、事後強盗傷害罪(刑法240条)にあたる。

3甲は追跡する甲に対してナイフで足を刺している。

4甲は、追跡するAの足をナイフで刺しているので、傷を負わせる認識があったと認定でき、その目的も逮捕を免れるためであったことは明らかである。ただし、それは窃盗から10分後であるので、窃盗の機会継続中の傷害といえるか。10分後であっても、Aが追跡し、捕まえようとしている状況において行われたのであるから、窃盗の機会継続中であったといえる。

5従って、事後強盗傷害罪(刑法240条)が成立する。

(3)甲にナイフを与えた乙の行為

1乙が甲にナイフを手渡した行為は、事後強盗傷害罪の幇助か。

2事後強盗罪は、窃盗が238条所定の目的から、被害者に対して暴行・脅迫を行う行為である。その実行を容易にした者には事後強盗罪の幇助が成立する。

3乙は、甲が窃盗を行い、逃走することを知りながら、その者に逃走用の道具としてナイフを手渡し、Aの足に刺す行為を容易にした。

4事後強盗罪は、窃盗が238条所定の目的から被害者に暴行・脅迫を行う身分犯である。これは窃盗という身分によって、暴行・脅迫という人身犯を強盗罪という財産犯へと構成する真正身分犯である。窃盗には関与していなくても、その事情を知りながら、この暴行・脅迫を幇助すれば、事後強盗罪の幇助が成立する。

5甲には事後強盗傷害罪(刑240条)が成立するので、乙にはその幇助が成立する(刑240条、62条)。

(4)乙が質やで仏像を換金した行為

1乙には盗品等の有償処分のあっせん罪が成立するか。

2盗品等の有償処分のあっせん罪とは、「財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」を領得した者から依頼を受けて、それを他の者に対して有償で買い取るなどをあっせんする行為である。

3乙は質屋に行って、仏像を自分の物だといって金を借りた。

4仏像は甲が事後強盗傷害罪によって領得した財物であり、それを質屋に行き、質草として渡して、金を借りるのは有償処分のあっせんにあたる。

5乙には盗品等の有償処分のあっせん罪(刑法256条1項)にあたる。

(5)乙が借りた金の半分を着服した行為

1乙が借りた金の半分を着服した行為は横領罪にあたるか。

2横領罪とは、自己の占有する他人の財物を領得する行為である。

3乙は、甲が盗んだ仏像の換金を依頼され、質屋から金を借り、その金を着服した。

4乙が着服した金は、甲の仏像を換金した金であるので、甲の金である。しかし、それは甲が乙に仏像という盗品の有償処分のあっせんを依頼して、得られた金である。甲が乙に盗品の換金を依頼し、それによって占有するに至った金であり、その金は不法原因に基づく寄託物であるので、甲にはその返還請求できない。しかし、乙から見れば、それは自己の物ではない以上、「他人の物」であり、その着服は横領にあたる。

5以上から、乙には横領罪(刑法252条1項)が成立する。

結論

 甲には、住居侵入罪、強盗傷害罪が成立する。両罪は牽連犯の関係に立つ。

 乙には、強盗傷害罪の幇助犯、盗品等有償処分のあっせん罪、横領罪が成立する。これらの罪は併合罪の関係に立つ。

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