刑法の答案の書き方をご紹介「業務妨害罪編」

業務妨害罪

 甲は、A国立大学教授Xが自己の思想と異なる発言をしたことに腹を立て、これに抗議しようと考えていた。そこで、甲は、Xが大学主催の公開講座において講演をすることを聞きつけ、この機会に抗議しようと教室内に入り、講演のために教室に入ろうとするXに対して、拡声器を用いてXの発言を糾弾するような内容をまくしたてた。この騒ぎの通報を受けた巡査Yが、この場に駆けつけ、甲を連れ出そうとした。そうしたところ、甲は、Yが自分を連れ出そうとすることに憤激したあまり、いったんはYに取り上げられた拡声器を奪い返すとともに、それを床にたたきつけて損壊した。しかしYは、何らそれに動じることなく、そのまま甲を警察署に連行した。これにより、講演は定刻どおりに滞りなく開始された。甲の罪責を論じなさい。

論点

(1)甲が抗議のために教室に入った行為について

(2)甲が講演のために教室に入ろうとするXに拡声器を用いてまくし立てた行為について

(3)甲がYから拡声器を奪い返し、それを床にたたきつけて損壊した行為について

(1)甲が抗議のために教室に入った行為について

問題の提起(被告人の行った行為は〇〇に該当するか?)

 甲が抗議のために教室に入った行為は建造物侵入罪にあたるか。

要件・概念の説明(〇〇の意義の説明)

 建造物侵入罪とは、建造物の管理権者の意思に反して、それに立ち入る行為である。

事実の認定(被告人が行った行為の事実認定)

 甲はXに抗議するために教室に立ち入ったが、そこは大学の教室であり(建物の性質)、公開講座が主催される場所であり(建物の使用目的)、Xの講演を聞く不特定または多数の人が集まる場所であった(教室の管理状況)。従って、一般的には甲のように対立する思想の持ち主の立ち入りを必ずしも排除しているとはいえない。しかし、甲は講演の妨害のために拡声器を持って立ち入った(建物への立ち入りの態様・目的)。

事実の法的評価(認定された事実への概念の当てはめ))

 このような甲の立ち入りを、公開講座を主催する建物の管理権者が容認しているかというと、そのような甲の立ち入を容認していないことは合理的に推定することができる。

結論 

従って、甲は建造物侵入罪(刑法130条)が成立する。

甲が講演のために教室に入ろうとするXに拡声器を用いてまくし立てた行為について

問題提起(被告人の行った行為は〇〇に該当するか?)

 講演のために教室に入ろうとするXに対して、拡声器を用いてXの発言を糾弾するような内容をまくしたてた行為は公務執行妨害罪にあたるか、それとも威力業務妨害罪にあたるか。

要件・概念の説明(〇〇の意義の説明)

 公務執行妨害罪とは、公務員が職務を執行するにあたり、それに暴行・脅迫を加える行為である。

事実の認定とその評価(被告人が行った行為の事実とその評価)

 Yは、甲が拡声器を用いてXの講演を妨害するのを阻止するために、それを取り上げ、甲を連れ出した。その為は、威力業務妨害罪の現行犯逮捕であり、公務にあたる。

事実の法的評価②(認定された事実への概念の当てはめ)

 では、甲がYから拡声器を奪い返し、床にたたきつけた行為は、公務執行妨害罪の暴行にあたるか。暴行は、一般に人の身体に対する有形力の行使と解される。甲は拡声器を床にたたきつけただけであり、Yの身体に向けて有形力を行使していないので、暴行にはあたらないと解することもできる。しかし、公務執行妨害罪の保護法益は公務の適正な執行であり、公務員の身体に暴行を加えた場合はもちろん、公務の執行が妨害されうる程度の間接的な有形力の行使も含まれると解される。甲がYから拡声器を奪い返し、それを床にたたきつけることによって、Yが甲の教室外に連れ出すことが困難になる物理的ないし心理的な状況が生じたと認定できる。従って、甲の行為は暴行にあたるといえる。

結論 

従って、甲には公務執行妨害罪(刑法95条)が成立する。

結論

 以上から、甲には建造物侵入罪、威力業務妨害罪、公務執行妨害罪が成立する。建造物侵入罪は威力業務妨害罪を行うための手段行為であるので、両罪は牽連犯(刑法54条後段)の関係に立つ。それと公務執行妨害罪とは併合罪(刑法45条前段)である。

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