「文書偽造罪②」 替え玉受験は何罪にあたるのか刑法論述問題の答案の書き方

文書偽造罪②

 甲は、私立A大学を受験しようとしたが、受かりそうにもなかったので、乙に代わりに受験してもらうよう依頼した。乙は、甲の代わりに答案用紙に甲の名前を記載し、マークシート式試験を受験し、無事甲は合格することができた。
 入学後、甲は国が設けた障害者のための授業料の免除制度を利用しようと考え、国立病院のB医師に、自分は重度の難聴であると虚偽の報告をし、うその診断書を作成させた。  そして、それを文部科学省に提出した。その結果、甲は免除資格を得ることができた。

 甲および乙の罪責を論ぜよ。

論点

(1)乙が甲の代わりに受験して、マークシート式の解答用紙に甲の名前を記載して提出した。回答欄にマークした。この行為が私文書偽造罪、同行使罪にあたるか。

(2)甲が、国立病院の医師Bに虚偽の報告をして、うその診断書を作成させ、それを甲に交付させた行為は、虚偽診断書作成罪、同行使罪の間接正犯にあたるか。

(3)甲がうその診断書を文部科学省に提出して、授業料免除資格を得た行為が利益詐欺罪にあたるか。

解答例

(1)乙が甲の代わりに受験して、マークシート式の解答用紙に甲の名前を記載して提出した。回答欄にマークした。この行為が私文書偽造罪、同行使罪にあたるか。

1乙の行為は私文書偽造罪にあたるか。

2私文書偽造罪とは、行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して、権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画(とが)を偽造するなどの行為である。

 文書とは、実際の社会生活を送るうえで交渉を有する事項に関する文書をいう。偽造とは、名義人でない者がその名義を冒用して文書を作成することをいう。

3乙は甲から依頼を受けて受験し、マークシート解答用紙に正解を記入して提出した。

4マークシート式の解答用紙は、文書にあたるか。文書とは社会生活において他者と交渉するための権利、義務などの事実を証明する文書であるが、本件のマークシート解答用紙は、受験者が正解であると判断した意思内容を記載し、それによって入学許可の可否が判断されるものであり、出題に対してどれほどの正解を答えたかについて事実を証明する文書であるといえる。

 また、乙は甲から甲名義の文書の作成の依頼を受けて作成しているので、偽造にあたらないという見解もあるが、私文書偽造は名義人の文書作成権ではなく、私文書の社会的信用性を保護法益とするものなので、甲が許可してことによって、乙の行為が偽造にあたらないとすることはできない。乙は甲名義の解答用紙を作成したので、名義を冒用であり、偽造にあたる。、

5乙が甲の代わりにマークシート式の解答用紙に正解と思われた番号などにマークをした行為は私文書偽造にあたり、それを亭主した行為は偽造し文書行使罪にあたる。

 また、甲は乙に身代わり受験を依頼して、それをさせたので、その行為は、私文書偽造罪、同行使罪の教唆にあたる。

(2)甲が、国立病院の医師Bに虚偽の報告をして、うその診断書を作成させ、それを甲に交付させた行為は、虚偽診断書作成罪、同行使罪の間接正犯にあたるか。

1甲の行為は虚偽診断書作成罪、同行使罪の間接正犯にあたるか。

2虚偽診断書作成罪とは、医師が公務所に提出すべき診断書などに虚偽の記載をする行為であり、虚偽診断書行使罪とは、それを申請者に交付する行為である。

3甲は国立病院の医師Bにうその報告をして、虚偽診断書を作成させ、交付させた。

4虚偽診断書作成罪、同行使罪は、医師という身分を有する者が行う真正身分犯・構成的身分犯であり、医師資格のない非身分者にはそれを行いえない。ただし、一般に構成的身分犯については、非身分者が事情を知らない身分者を介して、それを間接的に実行することができると解されている。従って、甲は医師Bにうその報告をして、虚偽診断書を作成させ、交付させたので、虚偽診断書作成罪、同行使罪の間接正犯が成立するように思われる。

 ただし、刑法は公文書偽造の間接正犯については、その客体を公正証書などに限定して成立を認める規定を設けている(157条の公正証書原本不実記載罪)。これは、公文書偽造の間接正犯は公正証書などに限定され、それ以外の文書については、間接正犯の成立を否定する趣旨であると理解することができる。

5そうすると、甲には虚偽診断書偽造罪、同行使罪の間接正犯は成立しない。

(3)甲がうその診断書を文部科学省に提出して、授業料免除資格を得た行為が利益詐欺罪にあたるか。

1甲が文部科学省に虚偽診断書を提出して、授業料免除資格を得た行為は利益詐欺罪にあたるか。

2利益詐欺罪とは、人を欺いて財産上不法の利益を得たり、第三者に得させる行為をいう。

3甲は、医師Bに作成させた虚偽診断書を文部科学省に提出して、授業料免除資格を得た。

4甲は、難聴であることの虚偽内容の診断書であることを秘して、文部科学省に提出したのは、欺く行為にあたる。また、担当職員に授業料免除資格を認めさせたのは、納付すべき授業料の納付義務を免れることであり、財産上の利益にあたる。国家機関である文部科学省の財産であっても、刑法の利益詐欺罪によって保護されると解される。

5従って、甲には利益詐欺罪が成立する。

結論

 以上から、乙には私文書偽造罪、同行使罪が成立する。両罪は牽連犯の関係に立つ。

 甲には、私文書偽造罪、同行使罪の教唆犯が成立する。両罪は、1個の行為で行われているので、観念的競合の関係に立つ。

 甲にはさらに利益詐欺罪が成立する。

 甲が行った前者と後者の罪は、併合罪の関係に立つ。

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